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〜第二章.晴賢、立つ!〜


山口でのやり取りの数日後、陶隆房(後の晴賢)様の居城・富田若山(とだわかやま)城(現:周南市)の一室に、数名の将が集まりました。

「伊豆、此度は何事かの?」

目つき鋭い男が隣にいた男に尋ねました。

「江良様、分かりませぬな。さすがに」

伊豆と呼ばれた男はそう返すと扇子を取り出し、パタパタと扇ぎ始めました。

「弘中様は如何でござろう?」

弘中と呼ばれた男は目を瞑り、何かを思案しているようでした。

「・・・・・・・・・殿が来られてから分かる」

「そうですな」

この時、部屋におられたのは次の方々でした。

周防須々万沼城主・山崎伊豆守興盛様。

周防岩国亀尾城主・弘中三河守隆兼様。

陶家宿老・三浦越中守房清様。

近習・伊香賀民部太夫房明様。

周防高森城主・宮川甲斐守房長様。

石見守護代・問田備中守隆盛様。

石見益田七尾城主・益田越中守藤兼様。

いずれも、大内家中において、武闘派と呼ばれた将星ばかりでした。


やがて。

ピシャッ!

小気味よい音と共に障子が開けられ、一人の偉丈夫が現れました。

精悍な顔にがっちりとした体格。左頬にはくっきりと刀傷が付いています。

男の名は、陶尾張守隆房。大内三家老の一人です。

「殿、此度はいかなる御用にてござりましょう?」

真っ先に顔を上げたのは、三浦様でした。

「うむ…………」

隆房様は一度そこで言葉を切ると、軽く目をつぶりました。

「………房清」

「はっ!」

「………………仮にわれらが立った時、敵に回りそうな者を答えよ」

『…………ッ!』

その瞬間、確かに部屋の空気が冷たくなったのを、この部屋にいた全員が感じ取りました。

「………………殿、も、もしや………!」

しばしの間があって。

「先程築山館に張り付かせて置いた忍から知らせが入った」

「して、なんと?」

「青景殿が御館様に諫言を行ったらしい。だが………」

そこまで言うと、隆房様はにわかに表情を険しくさせました。

「………如何されたのですか?」

「うむ。安富源内の奴に扇で額を叩かれたと」

その瞬間、皆様の表情が怒りに満ちた物となりました。

それもその筈です。

大内家の奉行人を務める青景様が小姓風情に扇で叩かれると言うのは、当時の武士にとって屈辱の極みです。

「おのれ源内め! 御館様の寵愛を盾にいい気になりおって!」

「陶殿、我等これ以上放っておいては、大内家は腐り、滅びるしか道は残っておらぬ! もはや陶殿が立つしか方策はありませぬぞ!」

三浦・問田のお二方の怒声が部屋の外まで響き渡りました。

「………殿、いかが致しましょう?」

弘中様の問いに、

「…………………」

隆房様は瞑目し、黙り込みました。

さて、どうするか。

この調子では、相良と安富の二人の思うままに大内家は荒らされてしまう。

「先ほど、内藤、杉の両家より、挙兵を求める書状が参りました」

伊香賀様の声も、どこか遠くのことにしか聞こえないほど、隆房様の思考はある一点に集中されておりました。

わしとて、御館様を死なせたくは無い。だが、このままでは大内が滅んでしまう……

内藤殿とて、決して御館様を討ちたくはないのじゃ……

義隆様と隆房様の間には、未だ切っても切りきれぬ何かがありました。

…………どうするべきか………

「殿、相良・安富らの暴政の所為で、民も苦しんでおるのですぞ!」

弘中様のこの一言が、悩んでいた隆房様の何かを動かしました。

やはり……………それしか手が無いのか………

「皆の者」

隆房様の目がキラリと光りました。

それは涙なのか、それとも気のせいなのかは分かりませんが、先ほどには無かった威圧感を皆様は感じておりました。

『ははっ!』

「わしは………苦しんでおる民を、そして、このまま誇りある大内が滅びるのを見たくは無い。それゆえ、御館様を退け……………新たな大内を作る!」

『おぉ!!!』

歓声が大広間に響き渡りました。


「…………やはり、陶殿は立つのか………」

大広間の天井裏で、一人の忍びがボソリと呟きました。

辺りには、大内の忍びの亡骸が散乱しています。

「元就様にこのことを伝えねば………この機会を逃せば,毛利の立つ道は無い」

そう言うと、男はすぐに城を後にし、街道を駆け出しました。

目的地は、毛利家本拠地・吉田郡山城。

男の名は、世鬼政清。毛利忍軍の頭…………。



………………続きをお聞きになりますか?………………



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