〜最終章「嗚呼素晴らしきかな第二の人生」〜



秀吉は天下を統一し、平和が訪れし頃・・・・・
雑賀に店を出した「紀伊國屋」は順調に業績を伸ばし、雑賀の町民の信頼を得るまでに成長した。
豊国はそれを素直に喜んでいた。また、豊国は商人の傍ら、剣術道場を開いて老若男女を集わせ、人気を博した。七助も商売人の腕を着実に伸ばしていた。
このような生活が続くとおもっていた。しかし・・・・・

剣術道場

それは突然の知らせだった。
「大変です!お上の方々がこの道場に!!」
それを聞いた豊国は腰を据えて無の境地に入っていた。
「お上の方々を呼びなされ。」
そのお上を見たとき、豊国は少し動揺したかのように見えた。
「山名豊国だな?」
すると、豊国は臆せずに、
「そうです。私が山名豊国です。」

役人は豊国を連行しようとした。しかし・・・・・
「待て!大事な先生とってどないするつもりや!!!」
「そうや!そうや!」
門下生・更には商店の客まで叫び始めた。
「黙れ!!お前達おとなしくしないとたたっ斬るぞ!」
役人は槍を突き出した。しかし、町民達は動じる気配がない。
「やれるものならやってみろ!わいらがただじゃすまさんからな!」
「やめなされ。」
豊国は静かに言った。
「今まで楽しませてもらったつけがまわってきたのじゃ。よいか今からわしが話をする。それを静かに聴いてくれ。あと、店のみんなも呼んでくれ。」

役者が集ったところで豊国は話し始めた。
今までのいきさつを話していく間に何故か豊国の顔がだんだん晴れていく様に見えた。
「・・・・・というわけじゃ。本当にいままで黙っててすまなかった。」
豊国はみんなに土下座した。
「やっと終わりか?他に何か言いたいことあるか?」
役人がうざったそうに言った。
「私に第二の人生を与えてくれた皆様に有難う。」
豊国は遂に連行されてしまった・・・・・

これは余談になるがこのあと、紀伊國屋は七助が継ぎ、ますます大繁盛したらしい。
後世の人々が豊国のことを「豊国屋文左衛門」と呼んだ。
しかし、紀伊國屋文左衛門と山名豊国は全く関係がない。両者にとって迷惑甚だしい事この上ないのである。


(最終章〜嗚呼素晴らしきかな第二の人生〜完)


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