〜第四章 鉄は熱いうちに打て〜



豊国と七助は堺の町に着いた。そこで、豊国は銀を両替してもらおうと思っていた。

「あったここだ。」

豊国は山名家の財産の番人と言われた、森下屋を見つけた。

「こ、これは・・・」

その森下屋は驚くほどに、建物がみすぼらしくなり、活気が無いように見えた。

その中も、外以上に活気が無い。中には寝ている番頭がいるだけだった。

しかし・・・

奥から出てきた老いた番頭は思いもよらぬ声で叫んだ。

「お〜いあの方がお帰りだぞ〜」


森下屋の社長森下利右衛門は豊国を見て一目でわかったようだ。すぐさま豊国達を奥へ連れ込んだ。

「この銀を両替して欲しいのだが・・・・」

利右衛門は銀をしげしげと見つめてこういった。

「中々面白いですな。この銀は年数がたつにつれ光を輝かせる幻の銀なのです。」

「しかし・・・」

利右衛門は口をつぐんだ。

「このような銀を持つ人は滅多にいません。なのでお上に見つかってしまうかもしれませぬぞ・・・・・」

「なら、不思議がられない職に就けばいいじゃないか。」

豊国はあることを放言した。

「商人になろうじゃないか。」


こんな豊国の思いつきに利右衛門はいろいろと手を尽くした。

そして、2年後・・・豊国と七助は店をのれんわけ出来るようになるまでに成長した。

まさに豊国達は熱いうちに打たれたのである。


そしてのれんわけの日が訪れたすっかり商人になった豊国は利右衛門にこう言った。

「わては必ず森下屋はんを抜きまっせ〜!」

それを聞いた利右衛門は少し笑ってしまった。なんという切り替わりの早さだ。

「頑張って下され。」

利右衛門はそれを言うのが精一杯だった。


銀を売った金で豊国は店を出すことを決めた。

「ところで、どこに店を開くのです?」

「雑賀じゃ。雑賀にはただの辺境だと思われがちだが、何かが秘められているような気がするのじゃ。」

こうして豊国は雑賀に店を出した。

之まで商人と言ったら鉄砲商しかいなかった雑賀の町に新たな旋風が吹こうとしていた。

「店の屋号はどうします?」

そう言われた豊国は即座にこう答えた。

「紀伊國屋だ。」

そう言った豊国の表情には不安の色など一切なく、自信に満ち溢れている顔をしていた。


(第四章 鉄は熱いうちに打て 完)



次へ進む

前へ戻る

小説へ帰る