『永遠』


ある日、僕はテレビを見た。

その番組は、ぶっちゃけて言えば、宗教系の番組で、人間の魂の事とかやっていた。

ありふれた番組。

「人間の魂は、死んだ後どこに行くとおもいますか?」

中年のアナウンサーの質問に、茶髪の、いかにも頭悪そうな女性が笑いながらこう言った。

「えー? 死んだ後の事なんてどうでもいいじゃん。今が楽しかったら」

次に質問されたいかにも頭固そうなどこかの大学の教授が長く伸ばしたひげをしごきながら言った。

「人間なんて、死んだ後にはただの肉塊になるだけだろ。魂とか死後の世界なんてナンセンスでしかない!」


その瞬間、僕は思わず苦笑した。

それはそうだろう。

本来、幽霊なんてこの世にあるはずの無い存在だ。

幽霊と密接な関係を築いてるなんて、他人に言ったって、誰も信じてはくれないだろう。

ましてや、幽霊に惚れられてるなんて。


と、その時。

―――れーいーく〜〜〜ん〜〜〜〜〜!

僕の頭上から声がする。

上を見ると、そこには澪ちゃんがいた。

―――零君、遊びに来ちゃった

いつものように満面の笑みを浮かべて。


でも、そこにいるその娘こそ、本当の幽霊なわけで。

ホントなら、僕と同じ世界にいる訳無いのに。

僕の表情を見てか、澪ちゃんはちょっと小首をかしげていた。

「澪ちゃん?」

―――何?

「永遠って何だろうね?」

―――永遠? それって食べれるの?

ガクッ。

そんな擬音とともに、僕はソファーに崩れ落ちる。

―――冗談だって!

ホントに分かってるのか微妙だけど、一応納得しておくことにした。

―――あ、これ見てたから?

澪ちゃんはテレビを指差した。

「うん」

僕は小さく頷いた。


―――零君、どうしたの?

「何が?」

―――何か………凄く寂しそう…

「………そう?」

―――うん………何か

澪ちゃんの心配そうな表情。

その表情を見た瞬間。


…………え!??

澪ちゃんが消えていく。

僕の目の前で、まるで霧が薄れていくかのように。


無意識のうちに僕は澪ちゃんの手を掴もうとし、空をすり抜ける。

―――零君!??


その声で、僕は我に帰った。

「ごめん……」

僕はそう呟くと顔を俯けた。

今のは厳格だったのか、いや、それにしてもやけにリアルだ。

………僕は何を恐れてるんだろう。

何を恐れているんだろう。

澪ちゃんを失うのが怖いのか。それとも、今のこの楽しい、永遠に続くような時間が終わ………

「零君」

そっと肩に暖かい感触が。

「え?」

―――大丈夫だから

ん?

「私なら大丈夫だから。ずっとここに居るから」

僕の考えて事に気づいたのだろうか。

…………ありがとう。

僕は心の中でそう呟くと、静かに涙を流した。


この永遠に続くような時間――――――叶うのならばずっと続いて欲しい。

僕はそう思った。


※あとがき※

何となく書いてみた作品です。

永遠というテーマ、実はこの夢追い人ではかなり大きなものだったりします。

とりあえず、今回は澪と零一を主人公にして書いてみました。

凄くありふれた答えなような気もしますが。

………もしかしたらこのお題は数回やるかもしれませんのでお楽しみに。

2005.9.25 Masanari Kawamura


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