〜第一章 光秀謀叛〜



1582年旧暦6月2日未明。ここは京、本能寺。寺とはいっても濠で囲まれている。いや、ここ周辺の寺はほとんどそうである。ここには今、織田信長以下小姓衆や侍女など100人前後が眠っている。その信長の小姓の一人、森蘭丸は廊下の足音に目を覚ました。


森坊丸「兄上」

その声の持ち主はすぐしたの弟の坊丸だった。

蘭丸「むむ?どうした?」

坊丸「なにやらこちらに軍勢が向かっておる様子です斥候が発見しました」

蘭丸「数は?」

坊丸「先鋒が1000程。その後本隊が到着すると思われます」

蘭丸「一刻も早く上様にお伝えせねば」


信長「なんじゃ、かような夜中に」

蘭丸「実は…」

すると二人はこのことを一つ残らず伝えた…

信長「で、主に弓引くたわけはどこの誰ぞ?まさか妙覚寺にいる信忠か?」

坊丸「いえ。旗からして惟任日向様かと」

信長「光秀かッ…とにかく、本能寺にいる人間全てに伝えい。大阪方面に退却じゃ。妙覚寺にも伝えろ」

こうして撤退が始まった。そのころ明智軍は…



天野権右衛門「ふふふ。気づかれずに門の前まで来たわい」

斎藤利三「いっそのこと我らだけで攻め込むか?」

天野「いや、それはまずい。本陣からの指示がなければ」

この二人は明智光秀の重臣である。特に利三は光秀の娘婿である。この二人は兵一千を預かって先鋒をつとめている。

とそこに本陣からの使いがきた。

光秀使番 「申し上げます。日向守様は斎藤様天野様の先鋒で信長公の首級を取れと仰せになりました」

権右衛門・ 利三 「わかり申したと伝えてくれ」

使番 「はは」

権右衛門「者どもぉ。目指すは大魔王信長の首じゃ。首級を挙げた者には望みの恩 賞をくれてやる。はむかう者1人残らずぶち殺せ。全軍とつげーきぃ!」

と権右衛門が絶叫したら明智軍の士気は一気に高騰した。

しかし利三は不思議に思った 。

利三 「のう、天野殿。我が軍がこんなに騒いでおるのに寺内からは何の音も聞こえん」

権右衛門「気のせいじゃろう。利三殿」

やがて門を突破した。が、ここで権右衛門と利三は愕然とした。本能寺には人っ子一人いないのである。

権右衛門「すぐに本隊に連絡を」

雑兵「はは」

そのころ何も知らない明智本隊では…


先鋒使番 「申し上げます…」

明智光秀「なんじゃ。信長の首を取ったか。」

使番「いいえ。事前に気づかれた模様で、小姓1人討ち取れませんでした」

光秀「何じゃと…そんな馬鹿な。では妙覚寺は」

使番「信忠様以下もぬけの殻にございます」

光秀は唖然とした。しばらく考え込んだ。そして出した結論は…

光秀「…これより我が軍は…京を占領するといたす。天野権右衛門を呼べ」

しばらくすると権右衛門が来た。

光秀「権右衛門、そちは一体いづこを警戒しておったのじゃ」

権右衛門「はは、申し訳ありませぬ…」



権右衛門は光秀から叱責された。実はこの権右衛門は本能寺から脱出者がでないように見回りのために本隊より一足早く出陣していたのである。そこに斎藤利三隊が加わったのだ。

この失敗は大きかった。

結局明智光秀の謀反は失敗に終わった。

(第一章 光秀謀反 完)



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